設備等のリスクマネジメント技術者認証制度について

趣旨
石油, 化学, ガス, 電力等の産業分野では, 経年劣化の進んだ設備等の効率的な運転と安全管理が大きな問題となっています. 
供用中の設備等の安全を確保し, 信頼性を維持, 向上して効率的な操業を行うためには, 信頼性と安全性に加えて, 社会性と経済性を包含したリスクベース工学に関する専門知識と経験を持つ技術者が必要です. そしてこれらの技術者の能力は, 中立的な立場にある第三者機関により公的に認証されることが望まれます. 
そこで, 圧力設備に関する専門家集団を擁し, また, 長年にわたりRBM (Risk Based Maintenance) の調査研究に携わってきた当協会が, 設備等の維持管理において, リスクアセスメントを実施し, 得られる評価結果をもとに, 的確にリスクマネジメントができる実践的な技術者の能力を, 中立機関として公正な立場から評価し, 設備等のリスクマネジメント関する技術者 (以下, 設備等のリスクマネジメント技術者という) として認証することを目的として本制度を創設しました. 

認証取得による利点と効果
これまで, 設備等のリスクマネジメント技術者の能力を評価する制度はありませんでした. 本制度を利用することにより, 設備等のリスクマネジメント技術者の育成を図ることができるとともに, 企業及び技術者個人にとって次のような利点と効果があります.
  1. 設備等を保有する企業にとっては, リスクマネジメント能力を有すると第三者機関に認められた技術者が, リスクベース工学に基づき, 技術的に合理的で適切な保守点検を行うことで, 保守点検の経費節減とともに, 設備の安定運転が可能となります.
  2. 設備等の保全に関連する企業にとっては, 設備等のリスクマネジメント技術者を確保して設備保有企業の保守点検業務を支援, 実施することにより, 顧客の信頼度を高めることができます.
  3. 技術者個人にとっては, 設備等のリスクマネジメントに関する認証を得ることにより,リスクマネジメント能力に対する社内外の信頼度を高めることができます.


制度の概要について
1. 適用範囲
本制度で対象となる設備等とは, 石油, 化学, ガス, 電力等で供用されている圧力容器, 熱交換器, 加熱炉, ボイラー, 貯槽, 配管となりますが, 鋼構造物, 回転機械, 電気, 計装, 土木及び建設設備等についても, リスクベース工学の知識が活用できるものについては, 全て対象とすることができます. 

2. 設備等リスクマネジメント技術者の資格要件
設備等のリスクマネジメント技術者に要求される知識及び職務能力は, 表 1 のとおりです.
  
知識及び職務能力
  • リスクマネジメントを実施するために必要な以下の基礎知識
      設備等の設計, 製作, 劣化損傷, 検査, 診断, 補修
  • リスクマネジメントの高度な専門知識
  • リスクマネジメントを行う実践的職務能力   

表 1 : リスクマネジメント技術者の知識及び職務能力   
  
3. 受験資格
受験者の所属業種に制限はなく, 設備等の設計, 製作, 検査, 診断, 補修, 保安管理, 運転管理及びリスクマネジメントに関連した職務のいずれかに従事した方で表 2 に示す経験年数があればどなたでも受験できます.  
なお, 小規模な事業所であること等により他の職務と兼務であった方については, その職務内容の実態に応じて受験資格を審査します. 
 

学歴 必要職務経験年数
 理工系大学院修了者
2年 
 大学理工系学部又は工業高等専門学校専攻科卒業者  
3年
 短期大学理工系又は工業高等専門学校卒業者 
4年
 工業高等学校卒業者 5年 
 上記学歴によらない者   
6年

表 2 : 受験資格
[備考] 表中の経験年数は, 最小限の必要年数を表しています.     

4. 評価試験
当協会は, 表 1 に示すリスクマネジメント技術者の知識及び職務能力を確認する評価試験を実施します. 
評価試験は筆記試験とし, 試験の対象となる主な技術知識分野は, 表 3 のとおりです. 
  (一社) 日本高圧力技術協会「圧力設備等の診断に関する技術者の認証基準 
(略称 圧力設備診断技術者認証基準) 」 (HPIS F101) のレベル 1 又は 2 の認証資格保有者については, 表 3 の 1.「設備等の診断に関する基礎知識」は既に取得済みと評価できるので,1. の評価試験は免除されます.   
    (注)
上記の認証資格を保有していない方は, 表 3 の全科目の受験が必要となりますが, 1. の学習に際しては, (一社) 日本高圧力技術協会 圧力設備診断技術者レベル 1 のテキストにより基礎を習得するか, 圧力設備診断技術者レベル 1 の教育講習会を受講して基礎知識を習得することもできます.
試験の対象となる主な技術知識分野
(1) 圧力設備等の診断に関する基礎知識
(2) リスクマネジメントの専門知識
 ・リスクマネジメントの基礎
 ・プロセスプラントのリスクアセスメント
 ・プロセスプラントのリスクアセスメントの実践
 ・ハザード
 ・オペレーションのためのリスクアセスメント
 ・リスクベースオペレーションの実践
 ・メンテナンスのためのリスクアセスメント
 ・リスクベースメンテナンスの実践

表 3 : 試験の対象となる主な技術知識分野      
 
   BOKBody ofKnowledge)はこちら 

5. 合否判定基準
受験資格に適合し、
基礎知識及びリスクマネジメントの専門知識毎に評価試験において70%以上の点数を得た受験者を合格とする

6. 適格性証明書の交付及び認証登録の有効期間
評価試験に合格した方は, 所定の手続きにより認証登録を当協会へ申請する必要があります.
認証登録の有効期間は 5 年で, 当協会は申請者に適格性証明書を交付します.  

7. 認証の更新
登録者は, 認証を更新しようとする場合, 有効期間満了前 1 年から 3 ヶ月前までに申請し, かつ認証が失効する前に, 当協会の更新審査を受ける必要があります.     

 更新審査は, 更新審査申請書に基づく設備等の設計, 製作, 検査, 診断, 補修, 保安管理, 運転管理及びリスクマネジメントに関連する職務への従事経歴の書類審査により行います. 

ただし, 書類審査の結果, 当協会が必要と認めた場合には更新試験 (最新の設備等のリスクマネジメント技術者に関する試験) を受けていただくこととなります.